介護ベッドとは?
介護ベッドとは、電動での”背上げ“、”脚上げ”、”高さ調整”などの機能により、介護される方(介護者)、介護をする方(介助者)の負担を軽減する福祉用具です。介護ベッドの種類や機能によって、”身体負担の軽減”、”介護負担の軽減”、”寝たきりの防止”などに役立ちます。
近年は、細かいニーズに特化した製品も発売されており、製品は多様化していますので、導入時の選定には、製品知識があると安心です。また、介護ベッドの選定を福祉用具専門相談員などに任せる場合は、利用者の身体状態や使用環境をできるだけ細かく伝えることで、利用目的に合った製品の紹介につながります。
介護ベッド導入前に知っておきたいこと
介護ベッドの選び方についてご紹介する前に、介護ベッドを導入するにあたって、事前に知っておきたい”レンタルと購入のメリットデメリット”について、”導入時の公的補助金”についてご紹介します。
介護ベッドは”レンタル”と”購入”どちらが良いか
介護ベッドレンタルのメリット・デメリット
介護ベッドレンタルのメリット
○定期的なメンテナンスをしてもらえる
○故意による破損などでなければ、無償で修理・交換してもらえる
○身体状態の変化に応じて製品を入れ替えることができる
○短期的な利用も可能
○不要になった場合は撤去してもらえる(体調回復時、入院時、死亡時など)
○介護保険を受けている場合、介護度などの要件を満たすと公的補助(補助金)が受けられる
介護ベッドレンタルのデメリット
✕自分のものとして扱うことができない
✕新品が利用できない場合が多い
✕利用を終了するまで継続した支払いが必要
介護ベッド購入のメリット・デメリット
介護ベッド購入のメリット
○自分の所有物として気持ちよく使える(特に新品の場合)
○中古品は低コストで導入できる場合がある
○購入後は、継続した支払いがない
○身障者などを対象とした公的補助(補助金)がある
介護ベッド購入のデメリット
✕導入費用が高い
✕修理などメンテナンスに費用がかかる
✕不要になった場合の撤去に費用がかかる
介護ベッドが必要になるケースは、”老化が進み身体状態が変化した”、”怪我や病気による退院後の一時的な利用”など多様にありますので、利用目的に合った導入方法を選択して頂きたいと思います。
介護保険で認められる導入方法は、レンタルのみとなります。介護度などの条件を満たすことで、正規料金の1割~3割の負担でレンタルが可能になるため、介護保険の公的補助(補助金)を受けての介護ベッドを購入することはできません。
介護保険での介護ベッド(特殊寝台)利用料金例
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | 正規料金(全額自己負担) | |
介護ベッド(特殊寝台) | 1,200 | 2,400 | 3,600 | 12,000 |
マットレス(標準タイプ) | 200 | 400 | 600 | 2,000 |
サイドレール(1本) | 50 | 100 | 150 | 500 |
介助バー(ベッド用手摺) | 200 | 400 | 600 | 2,000 |
計(月額レンタル料) | 1,650円/月 | 3,300円/月 | 4,950円/月 | 16,500円/月 |
計(年間レンタル料) | 19,800円/年 | 39,600円/年 | 59,400円/年 | 198,000/年 |
レンタル料金は、製品、レンタル会社、地域毎に異なります。
介護保険レンタルでは、”定期的なメンテナンス”や”身体状態に適合しているかのモニタリング”、”身体状態が変化した場合の対応”、”ベッドやマットレスの交換対応”、”故障時の対応”等、メリットは多いため、レンタルがおすすめですが、介護保険を利用できる方でも、「2割、3割負担のレンタル料金を支払い続けるより、購入したい」、「新品を買って自分のものにしたい」などの購入ニーズもあります。その点は、利用者の考え方次第です。
介護保険を受けていなかったり、給付が認められない場合でも、”身体障害者手帳による給付”や”労災保険による給付”交通事故の場合、”NASVA(自動車事故対策機構)”により給付対象となる場合があります。制度については、次項でご紹介します。
ほとんどのレンタル会社では、1ヶ月単位でレンタルを行っているため、怪我などで退院して、短期的に介護ベッドを利用する場合は、レンタルがおすすめです。介護ベッドが不要になると、撤去もレンタル会社で行ってもらえます。
また、公的補助(補助金)が受けられず、長期的に介護ベッドを利用したい方は、自費レンタルよりも購入した方が、費用を抑えられる場合が多いでしょう。
介護ベッドの公的補助(補助金)について
介護ベッドには、公的補助(補助金)がいくつかありますので、導入の検討と合わせて、公的補助(補助金)を受けられる可能性があるか確認しましょう。
”介護保険受給者”や”身体障害者手帳”をお持ちの方で、一定の要件を満たしている方は、公的補助(補助金)を受けることができます。介護保険の認定を受けており、利用要件を満たしている方は、正規料金の1割~3割でレンタルが可能です。なお、介護保険では、購入の補助はありません。また、難病患者や身体障害者は、身体障害者手帳の等級などの要件を満たすことで、一定金額まで給付対象となります。その他、”労災保険”、交通事故に遭った場合は、”NASVA(ナスバ)”の制度によって給付される場合もあります。
これらの制度は、”特殊寝台”と呼ばれる機能や構造を満たした介護ベッドが公的補助(補助金)の対象となります。
介護保険での公的補助(補助金)
介護保険での給付
介護保険での介護ベッド(特殊寝台)は、レンタル(貸与)のみとなっており、対象者は、介護認定を受けており、かつ、要介護2~5の方が対象です。
ただし、要支援1,2、要介護1の軽度者の方でも、所定の要件を満たし、手続きを踏むことで、レンタル(貸与)の対象になる場合があります。このように例外的に給付を受けられることを例外給付といいます。例外給付を受ける場合は、所定の手続きがありますので、担当ケアマネージャーに相談しましょう。例外給付の場合、貸与が認められるまでには、時間が掛かる場合がありますので、早めに相談することをおすすめします。以下は、介護ベッド(特殊寝台)の例外給付に関する要件になります。
なお、介護保険での介護ベッドの購入については、補助の対象になっておりません。
特殊寝台の例外給付に関する要件
福祉用具が使用できる状態、認定調査結果により例外給付が適用されます。
例外給付の必要性は、サービス担当者会議等を通じた適切なケアマネジメントにより判断されます。また、末期がんやパーキンソン病などで主治医が医学的な所見に基づき必要性を判断した場合、所定の手続きを踏むことで、例外給付が認められます。
福祉用具が使用できる状態像(平成24年厚生労働省第95号告示第25号のイ)における次のいずれかに該当するもの
①日常的に起き上がりが困難な者
②日常的に寝返りが困難な者
認定調査の結果
①認定調査において起き上がりが「できない」
②認定調査において寝返りが「できない」
レンタル料金
介護保険でのレンタル金額は、利用者の負担割合によって、正規料金の1割~3割で利用することができます。ベッド本体、マットレス、その他付属品(ベッド柵など)を含めて、1ヶ月のレンタル料金が12,000円の場合、1割負担の方であれば、1,200円となります。料金は、レンタルする製品、レンタル会社によって異なります。また、利用する地域によっても料金に差があります。
マットレスやベッドに付属する手摺などは、別途レンタルになります。
特殊寝台とは
介護保険でレンタル対象となる介護ベッドは、”特殊寝台”と呼ばれる機能又は構造を満たした製品になります。
特殊寝台の機能又は構造等
サイドレールが取り付けてあるもの又は取り付けることが可能なものであって、次に掲げる機能のいずれかを有するもの
一 背部又は脚部の傾斜角度が調整できる機能
二 床板の高さが無段階に調整できる機能
障害者日常生活用具による給付
身体障害者手帳の所持者または、指定難病患者等は、要件を満たすことで、介護ベッド(特殊寝台)の給付対象となります。介護保険は違い、レンタルではなく購入となります。給付の決定は、全国共通ではありませんので、お住まいの各自治体の給付要件を必ず確認しましょう。以下は、例として札幌市の対象者、性能の要件、給付基準、耐用年数一覧となります。なお、介護保険で給付可能な場合は、基本的に介護保険が優先となります。
種目 | 対象者 | 性能 | 給付基準額 | 耐用年数 |
特殊寝台 | ① 下肢又は体幹機能障がいの程度が2級以上である身体障がい者(児)であり、原則として学齢児以上のものであって、寝返り、起き上がり、立ち上がり等が困難な者 ② 難病患者等であって、寝たきりの状態にあり、ADL「歩行」「食事」「入浴」「着脱衣」がすべて「一部介助」又は「全介助」の者 | 使用者の頭部及び脚部の傾斜角度を個別に調整できる機能を有するもの(本体と一括交付する場合に限り、基準額内で付属品としてテーブル及びサイドレールを給付することができる) | 154,000円 | 8年 |
上記例の”種目”とは、給付対象の用具のことです。”特殊寝台”とは、ベッド本体になります。障がい児の場合は、自治体によって”訓練用ベッド”で別の種目となる場合があります。
”対象者”は、身体障害者手帳で下肢又は体幹機能の障害等級が1級または2級となります。障害等級が1級または2級でも下肢または体幹以外の別部位での等級は、給付の対象となりません。また、難病患者等が対象となります。
”給付可能金額”は、154,000円となります。原則としては1割負担となりますので、154,000円のベッド購入した場合、15,400円が自己負担となります。また、住民税の納付金額によっては、給付対象にならない場合もあります。
”性能”は、ベッド本体の機能が基準を満たしているかどうかの判断です。介護ベッドメーカーの製品を選べば、概ね問題はないかと思いますが、窓口で申請時にカタログなどで確認すると良いでしょう。
”耐用年数”とは、前回の給付から再給付が可能になる期間になります。期間が満了していない場合は、再給付は基本的にできません。特殊寝台ではないのですが、私の利用者さんで、過去に耐用年数が満たなくても、利用者の状態変更でやむを得ない場合、再給付を認めて頂いたことがありました。特段の事情がある場合は、役場の窓口へ相談してみましょう。
介護ベッド(特殊寝台)に使用するマットレスや手摺等は、別種目となり、給付対象者や給付基準額等が異なります。介護ベッド(特殊寝台)が給付になっても特殊マット(マットレス)が対象にならない場合があります。
種目 | 対象者 | 性能 | 給付基準額 | 耐用年数 | |
特殊マット | ①次のいずれかの要件を満たしている者 ア 児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障がい者(児)として判定された障がいの程度が重度又は最重度である者で、原則として3歳以上の者 イ 下肢又は体幹機能障がいの程度が2級以上である身体障がい児で、原則として3歳以上の者 ウ 下肢又は体幹機能障がいの程度が1級である身体障がい者(常時介護を有する者に限る) ②難病患者等であって、寝たきりの状態にあり、ADL「歩行」「排泄」「食事」「入浴」「着脱衣」がすべて「一部解除」又は「全介助」の者 | 褥瘡の防止又は失禁等による汚染又は損耗を防止するためのマット(寝具)にビニール等の加工をしたもの | 19,600円 | 5年 | |
移動以上支援用具 | ①平衡機能又は下肢若しくは体幹機能に障がい有志、家庭内の移動等において介助を必要とする身体障がい者(児)であって、原則として3歳以上の者 ②難病患者等であって、下肢が不自由で、ADL「歩行」が「一部介助」又は「全介助」の者 | おおむね次のような性能を有する手すり、スロープ、簡易昇降便座、補高便座等の用具であること。 ア 障がい者(児)又は難病患者等の身体機能の状態を十分踏まえたものであって、必要な強度と安定性を有するもの。 イ 転倒予防、立ち上がり動作の補助、移乗動作の補助、段差解消等の用具とする。 ただし、設置に当たり住宅改修を伴うものを除く | 60,000円 | 8年 |
高額な床ずれ防止用マットレスは、自治体によって、別の基準額を設けている場合もあります。
介護ベッド(特殊寝台)に取付ける専用の手摺(介助バー等)は、移動以上支援用具の種目から給付となります。特殊寝台と別に基準額が設けられています。必要に応じて申請しましょう。
労災保険による給付
労災保険とは、業務上で起こったことが原因で、労働者の負傷・疾病・障害または死亡に対して労働者や遺族のためにある制度です。介護ベッドの給付要件としては、労災認定を既に受けており、労災年金の障害・傷病等級が1級~3級の方が対象です。最高15万円まで購入金額の3分の1が助成されます。障害・傷病等級が1級~3級の認定基準については、以下のとおりです。
障害 等級 | 身体障害 |
第一級 | 一 両眼が失明したもの 二 そしやく及び言語の機能を廃したもの 三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 五 削除 六 両上肢をひじ関節以上で失つたもの 七 両上肢の用を全廃したもの 八 両下肢をひざ関節以上で失つたもの 九 両下肢の用を全廃したもの |
第二級 | 一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 二 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 二の二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 二の三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 三 両上肢を手関節以上で失つたもの 四 両下肢を足関節以上で失つたもの |
第三級 | 一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 二 そしやく又は言語の機能を廃したもの 三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 五 両手の手指の全部を失つたもの |
別表第一 障害等級表より抜粋
NASVAによる給付(交通事故により介護ベッドが必要になった時)
NASVA(ナスバ)は、独立行政法人自動車事故対策機構の略称で、人と車の共存を理念として、自動車事故発生防止及びその被害の援護のために、重度後遺障害者への介護料の支給や医療施設の設置・運営を行っています。
交通事故により在宅介護を受け、介護ベッドを購入やレンタルしたときは、受給できる介護料の上限額までの範囲で支給されます。(サイドレールや介助バー、マットレス、テーブルなどの付属品や修理、交換に要する費用も含まれます)
介護料は、自賠責保険等において、認定される後遺障害等級によって異なります。詳細は、以下リンクをご参照ください。なお、申請には、領収証等の購入証明の提出が必要となります。
リンク:NASVA(ナスバ)独立行政法人自動車事故対策機構 介護料の案内 受取り対象となる方
介護ベッド公的補助(補助金)についてのまとめ
✔ 介護保険による給付
給付方法:レンタル(貸与)
対象者:介護認定を受ける要介護2~要介護5(例外給付あり)
自己負担費用:介護保険負担割合に応じて1割~3割を負担
✔ 障害者日常生活用具による給付
給付方法:購入
対象者:身体障害者手帳保持者(下肢又は体幹機能障がいの程度2級以上)、指定難病患者等
自己負担費用:原則1割
✔ 労災保険による給付
給付方法:購入
対象者:労災年金の障害・傷病等級が1級~3級
自己負担費用:最高15万円まで購入金額の3分の1
✔ NASVA(ナスバ)による給付
給付方法:購入、レンタル、修理・交換等
対象者:交通事故で在宅介護を受け、自賠責保険等において、後遺障害等級認定されている方
自己負担費用:認定される後遺障害等級によって異なる
介護ベッド選びの基本
介護ベッド選びの基本は、”サイズ選び“と”必要な機能の選択“です。ベッドのサイズを利用者の体格に合わせることで、ベッド上での快適性、寝返りしやすさ、介助のしやすい環境が整いますし、部屋のスペースに合ったサイズのベッドを選択することも介助を行ったり、部屋で快適に過ごすための環境整備になります。また、必要な機能の介護ベッドを選択することで、ベッドからの起き上がり、立ち座り時などの身体への負担軽減や介助の負担軽減に大きく関わります。介護ベッドメーカーや家具メーカーから様々な製品が販売されておりますので、用途にあった選択ができるようにご紹介したいと思います。
”サイズ選び”、”必要な機能”に加えて、介護ベッドを安全安心に利用する要素として、介護ベッドの”設置環境”についてもご紹介します。
介護ベッド選びの基本① -利用者にとって適正なサイズを確認する-
介護ベッドには、幅と長さのサイズがあります。サイズ選びは、”ベッド上での快適性”、”寝返りのしやすさ”、”介助負担の軽減”に関わりますので、利用者の体格や体動に合ったサイズを選びましょう。
利用者の体格に合ったベッド幅(マットレス幅)を選ぶ
介護ベッドのマットレス幅は、91㎝幅、83㎝幅、100㎝幅が基準となっています。(*一部メーカーでは、85cm幅等の上記以外のサイズを販売している場合もあります。)
91㎝幅 標準体型向けの介護ベッド
91㎝幅は、介護ベッドでは、標準的なマットレス幅です。機種によって異なりますが、ベッドの全幅は100㎝前後です。標準体型の方であれば、寝返りができるサイズで、介助時の負担も少ないバランスのとれたサイズです。介護用マットレスも91㎝を基準に作られているので、オプション品の種類も豊富に選ぶことができます。
83㎝幅 細身体型の人向けの介護ベッド
83㎝のマットレス幅は、幅狭サイズの介護ベッドです。機種によって異なりますが、全幅は93㎝前後です。幅が狭いので、細身体型でない方は、スペース的に寝返りしにくい場合があります。一方で、幅が狭い分、利用者と介助者の距離が近いので、介助しやすく、端座位をとりやすいので、ベッドからの乗り降りもしやすい幅です。
100㎝幅 大柄な人向けの介護ベッド
100㎝のマットレス幅は、幅広サイズで、大柄な方向けの介護ベッドです。全幅は機種によって異なりますが、109㎝前後です。幅が広い分、ベッド上でゆったり過ごすことができ、寝返りスペースを十分に確保できます。一方で、利用者と介助者の距離ができてしまうので、介助しにくさが発生する場合があります。また、ベッドの端まで距離があるため、端座位がとりにくく、ベッドの乗り降りに負担が生じる場合があります。
120㎝幅 大柄な人向けの介護ベッド
マットレス幅が120㎝のセミダブルサイズで、ベッド上でゆったり過ごしたい方向けの介護ベッドです。120cm幅の介護ベッドの製品は僅かで、マットレス等の付属品の種類も限られるので選択に制限があります。一方で、利用者と介助者の距離ができてしまうので、介助しにくさが発生する場合があります。また、ベッドの端まで距離があるため、端座位がとりにくく、ベッドの乗り降りに負担が生じる場合があります。
利用者の身長に合ったベッドの長さを選ぶ
ベッド長は、介護ベッドの機種によって3種類あります。身長に対してのベッド長の目安は、”ショートサイズ(身長150㎝未満の方向け)”、”レギュラーサイズ(身長175㎝未満の方向け)”、”ロングサイズ(身長175㎝以上の長身の方向け)”となります。
利用者の身長に対して適正なベッドの長さを選ぶことは、介護ベッドの電動機能の正しい使用する上で、大切な部分です。介護ベッドの背上げ、脚上げの可動部が、利用者の身体と合っていなければ、ベッドと身体の腰部、膝部の位置にズレが生じて、利用者の身体に負担がかかる恐れがあります。
介護ベッドによっては、利用者の身長に合わせて、膝位置を調整することができる製品もあります。
レギュラーサイズ (身長目安150㎝~175㎝)
レギュラーサイズの対象身長は、150㎝以上175㎝未満が目安になります。介護用マットレス等のオプション品は、レギュラーサイズを基準に作られているので、種類も豊富に選ぶことができます。
ショートサイズ (身長目安150㎝未満)
ショートサイズの対象身長は、150㎝未満が目安になります。レギュラーサイズよりもベッドの長さが10㎝程度短いので、省スペースで設置できます。介護用マットレスは、ショートサイズ専用を選ぶ必要があります。
ロングサイズ(身長目安175㎝以上)
ロングサイズの対象身長は、175㎝以上が目安になります。レギュラーサイズよりも10㎝程度ベッドの長さが長くなります。介護用マットレスは、オプション品の延長マットレスを使用する場合があります。
介護ベッドのサイズ選びのポイントまとめ
✔ 介護ベッド選びの基本は、“サイズ選び”と”必要な機能の選択”
✔ 適正サイズを選ぶことにより、”ベッド上での快適性”、”寝返りのしやすさ”、”介助負担の軽減”につながる
✔ 介護ベッドのマットレス幅は、寝返りに十分なスペースがあるか確認する
✔ 91cm幅は標準的なマットレス幅で、標準体型の方が、立ち座りや寝返り等がしやすいバランスの取れたサイズ
✔ 83cm幅は細身体型方向けのマットレス幅で、幅が狭い分、利用者との距離が近いので、介助しやすい
✔ 100cm幅は、大柄向けのマットレス幅で、ベッド上でゆったり過ごすことができ、寝返りスペースを十分に確保できる
✔ 介護ベッドの長さには、”ショートサイズ(身長150cm未満)”、”レギュラーサイズ(身長175cm未満)”、”ロングサイズ(身長175cm以上)”がある
✔ 介護ベッドの長さは、足上げ動作の際に、利用者さんの膝位置が合うようにサイズ選びをする。
サイズから介護ベッドを選ぶ
サイズが豊富に選べるおすすめの介護ベッド
小さいサイズのおすすめ介護ベッド
大きいサイズのおすすめ介護ベッド
介護ベッド選びの基本② -必要な機能を選ぶ-
介護ベッドは、各メーカーから様々な機能の製品が販売されており、利用者の身体状態が軽度から重度まで、幅広く対応できる機能が豊富な製品、利用者ごとの細かな利用ニーズに応えた機能の製品などが多様にあります。介護ベッドの機能について深く知ることで、利用者の状態に適した介護ベッドを利用でき、利用者の身体状態や介護の負担軽減につなげて頂きたいと思います。
利用者の必要以上にハイスペックな介護ベッドを選んでしまうと導入費用が高額になることや、機能の豊富さによって、操作時に利用者の混乱を招いてしまうことも考えられますので、機能と導入費用のバランスが良い製品を選びましょう。以下、介護ベッドの機能について、ご紹介します。
介護ベッドの基本機能
介護ベッドの基本的な機能は、”背上げ”、”脚上げ”、”高さ調整”の3つです。
背上げ機能
背上げ機能は、ベッド上で身体の上体を起こし、起き上がりの補助をする機能です。ベッドからの起き上がりを補助する他、ベッド上で食事をする時は、飲み込みやすい姿勢保持にも役立ちます。ベッドで過ごす時間が長い方も、上体を起こすと、ベッド上で座位を保ちやすくなります。目線が高くなり、視野も広がることで気分が明るくなり、家族との会話もしやすくなります。電動機能で無段階にベッドの背部角度を調整することができるため、利用者の安楽な姿勢を保つことにも役立ちます。
脚上げ(膝上げ)機能
脚上げ(膝上げ)機能は、ベッドの脚側が電動で無段階に上下することができる機能です。背上げ機能で、背の角度を高くすると、利用者の身体が脚側にズレることがあります。身体のズレを防ぐために脚上げ(膝上げ)機能を使って、膝を高くすると、安定した姿勢保持に役立ちます。
また、脚にむくみがある方は、就寝時に脚の位置を高くする事によって、安楽な姿勢を保持することができます。介護ベッドの種類によっては、”膝のみを上げる・脚先まで上げる”の切り替え設定が可能な機種があります。
高さ調整機能
高さ調整機能は、ベッド本体の高さを電動で無段階に昇降させることができる機能です。利用者の身長に合った高さに調整することにより、ベッドから立ち座りする時に、身体(特に腰や膝)の負担軽減につながります。また、車椅子を利用している場合、車椅子とベッドの高さを合わせることができるため、安全安楽に車椅子からベッドへ移乗する際には、必須の機能です。
また、ベッドの高さを介助者がシーツ交換などの作業しやすい高さに調整することにより、腰痛予防などの介助の負担軽減になります。
利用者の体動が激しく、ベッドから転落の危険がある場合は、ベッドを低いポジションにすることで、転落時の怪我リスクを減らすことが期待できます。最近は、ベッドを床に近いところまで下げることができる超低床ベッドも登場しています。
介護ベッドの基本機能のまとめ
✔ 介護ベッドの基本的な機能は、”背上げ”、”脚上げ”、”高さ調整”の3つ
✔ ”背上げ機能”は、起き上がりの補助、ベッド上での食事に役立ちます。また、ベッド上で座位が保ちやすくなる
✔ ”脚上げ(膝上げ)機能”は、背上げ時に安定した姿勢保持に役立ちます。また、脚位置を高く保つことで、安楽な姿勢保持につながる
✔ ”高さ調整機能”は、立ち座り時の腰や膝の負担軽減、安全安楽な車椅子からの移乗、ベッドから転落時の怪我リスク低減につながる 介助負担軽減に役立つ
✓ 介護ベッド長は、足上げ動作の際に、利用者さんの膝位置が合うようにサイズ選びをする。
介護ベッドの機能とモーター数
介護ベッドの基本的な機能である、”背上げ”、”脚上げ”、”高さ調整”をそれぞれ動かすには、1機能につき1つのモーターが必要です。
1モーターは、”背上げ”、”脚上げ”、”高さ調整”のうち1つの機能が備わった介護ベッドになります。2モーターは、”背上げ”と”高さ調整”ができる介護ベッド、3モーターは、”背上げ”、”脚上げ”、”高さ調整”のすべてが可能な介護ベッドです。以下では、モータ数別にどのような方が対象になるのかを紹介します。
1モーターベッド(背上げ)
1モーターベッド(背上げ)は、起き上がりに介助が必要な方向けの介護ベッドです。背上げ角度を電動で無段階に調整することができます。日常生活にあまり介助を必要としない方で、起き上がりの補助や就寝時に背上げ角度を調整したい方に向いています。
1モーターベッド(昇降)
1モーターベッド(昇降)は、立ち上がりに介助が必要な方向けの介護ベッドです。背上げ動作や膝上げ動作を必要とせず、ベッドから適した高さで立ち座りを行いたい方、車椅子への移乗を安全に行いたい方に向いています。
1+1モーターベッド(背上げ・膝上げ)
1+1モーターベッド(背上げ・膝上げ)は、起き上がりに介助が必要な方、ベッド上で安楽な姿勢を保持したい方向けの介護ベッドです。背上げ角度と膝上げ角度を電動で無段階に調整することで、背上げ時の身体のズレを防止することもできます。ベッドの高さは、ベッド組み立て時に調整するので、一旦高さを決めると、後から変更することが難しいです。自力でベッドから立ち座りできる介助が必要ない方に向いています。
2モーターベッド(背上げ・昇降)
2モーターベッドは、起き上がりや立ち上がりに介助が必要な方向けの介護ベッドです。
背上げ角度、ベッドの高さを電動で無段階に調整することができます。膝上げ動作は、背上げと連動の設定を行うことで可能になります。膝や腰に疾患があり、立ち座り動作に不安がある方や車椅子を常用されている方は、移乗動作や起き上がりを安全に行うため、2モーター以上の介護ベッドがおすすめです。
3モーターベッド(背上げ・膝上げ・昇降)
3モーターベッドは、起き上がりや立ち上がりが困難な方や、ベッド上で過ごす時間が長く、床ずれリスクが高い方向けの介護ベッドです。
背上げ角度、膝上げ角度、ベッドの高さを電動で無段階に調整することができます。背上げ角度、膝上げ角度をそれぞれ細かく調整することで、体幹が悪い方の姿勢保持にも役立ち、ベッド上での姿勢が楽になります。3モーターであれば、身体状態が変化した場合でも対応できることが多いです。導入に迷いがあれば、後から介護ベッドのモーター数を増やすことはできませんので、3モーターの介護ベッドがおすすめです。2モーターと3モーターの価格差は、機種によって異なりますが、2万円~4万円程度です。
4モーターベッド(背上げ・膝上げ・昇降・+ハイバックサポート)
4モーターベッドは、背上げ、膝上げ、高さ調節に加えて、頭部の角度調整可能なヘッドレスト機能(ハイバックサポート機能)を備えた介護ベッドです。背上げした状態から、さらに頭部を起こすことにより、誤嚥リスクの軽減につながり、ベッド上で食事を行う際に楽な姿勢を保持することができます。4モーターベッドは、数種類の製品のみで採用されています。
介護ベッドの機能とモーター数のまとめ
✔ 1モーターベッドは、”背上げ”、”高さ調整”いずれかの単機能
✔ 1+1モーターベッド(背上げ・膝上げ)は、背上げ角度と膝上げ角度を電動で無段階に調整できる
✔ 2モーターベッドは、背上げ角度、ベッドの高さを電動で無段階に調整することができる
✔ 3モーターベッドは、背上げ角度、膝上げ角度、ベッドの高さを電動で無段階調整できる
✔ 4モーターベッドは、背上げ、膝上げ、高さ調節に加えて、頭部の角度も調整することができる
介護ベッド選びの基本③ -介護ベッドを設置する場所の広さ・環境を確認する-
介護ベッドは、安全な場所に設置しなければ、事故や怪我の原因になるため、搬入予定のベッド寸法と設置スペースの確認は事前に行いましょう。
頑丈で平らな床に設置する
介護ベッドは、製品によって本体の重量が100kgを超え、利用者体重やマットレスや布団の重量も加わるため、経年劣化などで耐久性のない床は、危険です。設置予定の場所の床に不安がある場合は、事前に修繕するなど検討しましょう。
昇降機能付きの介護ベッドは壁から10㎝以上離して設置する
昇降機能のある介護ベッドは、10㎝以上*壁から離して設置する必要があります。スペースに余裕がないと、昇降機能使用時にベッドと壁が干渉してしまい、ベッドや壁を破損させてしまう恐れがあります。
*ベッドの仕様により、10cm以上離して設置しなければならない場合があります。使用する製品の取扱説明書にしたがって設置しましょう。
コンセントとプラグがベッドに干渉しないように気を付ける
介護ベッドと電源プラグが昇降時に干渉すると破損や火災の原因になりますので、介護ベッドは壁から10cm以上*離して設置するようにしましょう。
*ベッドの仕様により、10cm以上離して設置しなければならない場合があります。使用する製品の取扱説明書にしたがって設置しましょう。
介護ベッドの昇降機能には、垂直昇降と頭側にスイングしながら昇降する2タイプがあります。垂直昇降タイプの介護ベッドですと、壁にベッドの位置を壁に寄せやすく、狭いスペースでも設置しやすいです。
コンセントの配線が動線上にならないようにする
部屋のコンセントの位置が、介護ベッドを設置予定の場所から離れている場合は、配線の取り回しに注意しましょう。利用者の動線上に配線されないように、あらかじめ延長コードやモールなどを用意して対応しましょう。
介助・看護するスペースを確保(ベッド両側から作業が必要な場合)
おむつ交換・シーツ交換等の介助や看護師による処置を行う場合は、ベッド周りのスペースをできる限り広く取りましょう。介護ベッドと壁の間は、人が通ることができるように、最低でも50cm以上空けるようにしましょう。
車いすを利用するスペースの確保
車いすを利用している場合、部屋の中で旋回する必要があるので、ベッドの出入り口側のスペースをできる限り広く取りましょう。利用する車いすの回転半径によりますが、1.5m以上空けると利用しやすくなります。
ベッドと平行に車椅子を停めてベッドへ移乗する場合が多いので、ベッドの脚側は広めにスペースを空けておきましょう。
ポータブルトイレを利用するスペースの確保
ポータブルトイレを利用する場合は、ベッドサイドなどに設置スペースを確保しましょう。ベッドサイドに設置すると、トイレまでの移動距離が短くなる分、転倒リスクを減らすことができます。
ポータブルトイレを安全に利用するために、移動や立ち座りに使用する手摺の設置位置を利用者の動きを確認しながら決めましょう。また、下着やスボンの脱着時にも支えが必要な場合は手摺を追加すると安心です。
また、片麻痺がある方は、特にポータブルトイレを設置する向きに注意しましょう。立ち座りする時にポータブルトイレが健側になるように設置しましょう。